ウィーン・アンダーグラウンド pt.3
by waterr (withyoureyedea(at)hotmail.com)
「ポリティカル・ヒップホップ・グルーヴ−−−フェミニズム的・闘争的・反レイシズム的・反資本主義的」と名づけられたコンサートに行ってきた。ヒップホップといっても、まったくB-BOYINGとは無関係の文化であり、こういうものが世の中には存在しているんだなあ!というオドロキがあった。以下、レポート。
場所は、芸術大学の学生組合を中心として自主運営されているオルタナティブ・ユースセンター「TUEWI」(写真:下)。ライブハウス的空間(ステージ+バー+ソファ)の他に、フェア・トレードの有機食品を扱うショップも併設してある。週末はほぼ必ず何らかのイベントをやっているが、ジャンルはめちゃくちゃ。DIYパンク/ハードコアはもちろん、ヒップホップ、ドラムンベース、ボサノバなどのパーティから、学生の飲み会的なものまで。ただどのイベントも何らかのコンセプトやメッセージが必ずあり、「単に音楽を楽しむ」といった類いのものはない(そういうパーティは、他をあたれば町中に腐るほどある)。
一番手は、Aufs Maul。MC+ドラム+弦楽器の三人女性グループ(ただし、「女性」グループという言い方には本質的に意味がない。これについては、後で述べる)。見た目は、ドレッド・モヒカンなど完全にアナーコ・パンクス。遅くて重苦しいビートに、生ドラム+がらくたのような弦楽器が重なって、さらにラップがかぶさる。とは言え、ラップはほとんどフロウがなく下手といえば下手なのだが、ポエットリー・リーディング調でなぜか異様にかっこいい。まあ、ヒップホップというより、THE EXのようなアヴァンギャルドなパンクに近い印象。「警察を追い出して、街にもっと自由空間を!」と叫ぶ。さらに、国際婦人デーである「3月8日」というタイトルの曲では、アンチ・セクシズムがテーマ。
ところで、アンチ・セクシズムとかトランス・ジェンダーについてラップしている当のグループを、「女性グループ」という紋切り型の文句で語るのはかなり奇妙だと思う。「男性」ではなく「女性」のグループだとわざわざ強調する場合には、「女性らしさ」か、あるいは逆に、「女性らしくなさ」という点からこのグループを眺めていることになり、これでは、このグループの言いたいことのまったく逆の見方(つまり、セクシストの見方)をしていることになるから。
次に、Medusa&Tender Boy&DJ Smi。メインMCのM.Medusaと、もう一人のMC+DJからなる。彼/女らはそれなりにリリースがあり、ウィーンではまあまあ知られている。とは言え、ヒップホップ・ファンにというよりは、アナキスト/アクティビスト関係での知名度が高い様子。MCのM.Medusaは、もともとポエットリー・リーディングの世界からラッパーに転身しており、今でも、月に一回の「スラム・ポエットリー・コンテスト」の司会をつとめ、ユーモアある社会風刺リリックで、世の中を斬る。痛快ですな。この日は、まずアカペラで高速ラップ。有名な「わたしがダンスできなければ、革命じゃない」(エマ・ゴールドマン)をアレンジしつつ、あれやこれやを挙げて、「・・・できなければ、革命じゃない」と締める。この曲は、FM4というインディー専門ラジオが毎年主催する「プロテスト・ソング・コンテスト」に応募中のものということ。その後は、メランコリックなトラックに乗せて、ラップ。でも、彼女もやはり、ラップというよりはポエットリー・リーディングかな。なお、M.Medusaは、ウィーンのスクオットEKHのベネフィットCDにも参加している(以前にこのブログで紹介または言及したTotal ChaosやWaxolutionistsなども参加)。
最後は、Tres Monosなるグループ。コンゴ・フランス・オーストリアで生きてきたというMCが、アンチ・レイシズムをテーマにラップ。トラックは、ダンスホール調のもの、メタル調のもの、ラテンアメリカ風ポップ・ミュージックのようなものまであるのだが、どれをとっても、音楽的にはきびしいなあ。と思っていたら、なぜかステージから俺に無料CDをパスしてくれた・・・。あと、マイクを占有せず、「誰か、フリースタイルしたいひと?」と当然のこととして聞いていたのは良かった。
自分としてはとりわけ一番目のグループを見て、こういうヒップホップがあるのかと発見するとともに、自分もやりたいなあ(やれそうだなあ)とモティベイトされた一夜であった。それにしても思うのは、ヒップホップって、基本的に貧乏臭いんだよね、全然おしゃれなものじゃなくて。これはまた別の記事として書きたいのだけど、このことは、ウィーンは移民の街であり、ヒップホップはマイノリティーの文化として生きている(側面がある)ということと密接に関連している。もちろん、これはどこの都市でもそうだと思うけど。マイノリティーが、国籍に関係なくスキル一本で勝負できるヒップホップに賭けて、マジョリティーに抵抗していく。ヒップホップが、アンチ・レイシズムと結びつくのは当然のこと。
しかし、世の中には、ヒップホップが愛国心と結びつくのがほとんど当たり前になっているという風変わりな国もあるらしい。これは俺にはどうしても理解できない。しかし、これについてはまた次回。
(今回はカメラを忘れた。写真があればもっと良かったんだけど・・・。)
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