※2月8日(金)IRAで、イスラエルの平和活動家コビーとハダールのトーク・イベント開催しますので、さらに詳しくイスラエルとパレスチナの事情を知りたい方は、その場で直接かれらから話を聞くことが出来ますよ。
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イスラエルの物価高とその仕組み
イスラエルは物価が高い。家賃も高い。
エルサレム中心地で私と娘が住むアパートの家賃を例に挙げてみよう。6畳位の寝室が2部屋、ガス台の置き場がなくて食器を洗うと水が漏れる台所、小さくなって浴びなければならないシャワーとトイレのついた古いアパートで月10万円。住民税と水道代が毎月1万円、電気代8千円。
食費はもっと驚く。昼食にサンドイッチと飲み物を買うと、千円は軽く超える。レストランでパスタとサラダを注文すると3千円。収入が日本より高いわけでは決してない。どうやってこの物価高をイスラエルの国民は乗り切っているのだろうか。やりくり出来ない人もたくさんいる。現に去年はテルアビブをはじめとする大きな町で物価高と家賃高に反対するデモがひっきりなしに行われ、町の真ん中で生活苦を理由に焼身自殺する若者もでた。しかし、町のレストランやカフェバーはオシャレな若者で賑わっている。
18歳からの男子3年間女子2年間の兵役中の者に、職業兵士とリザーバーを合わせると、18歳から45歳までのイスラエル国民の約24%が現役兵士となる。
兵役中は月8千円の小遣いが支給されるが戦闘部隊は待遇が異なる。パラシュート隊に所属する義理の息子は月2万円もらっている。しかし、兵役中に親の家から通わずに、実家が遠い、または義理の息子のように両親がいない兵士が、誰かとでシェアしてアパートを借りると軍から部屋代として更に3万円が支給される他、アパート全体の住民税が免除される。職業軍人の給料は一般の会社員の約2倍、リザーバーは毎年1ヶ月徴兵されるが、この期間中は軍から給料が支給される。
兵役を終了すると国から25万円が『ご苦労様でした』と支給され、その後ウェイターやガソリンスタンドなどの保障のない職種の就労を6ヶ月すると23万円支給される。また、兵役後5年目までに商売を始めるか結婚するか進学すると80万円支給される。どんなに働いても生活するだけでぎりぎりであるはずのイスラエルの若者たちが悠々と海外旅行をしたり、親の援助なしでなんとか大学に通いながらバイトをして一人暮らしをしているのは、こういった兵役がらみの援助が政府から受けられるからである。西岸地区で国際法違反のユダヤ人専用住宅地を建てたり、パレスチナの土地を分断する分離壁をつくって莫大なお金を使ったり、核兵器を含む化学兵器を開発したりしている以外に、兵士に対する優遇金を支払い、これらを補う為に、イスラエル国民は莫大な所得税、住民税、消費税をしこたま政府から徴収されている。
ある日、義理の息子用のベッドが私のアパートに無料で運ばれてきた。実の両親が既に亡くなっている彼には『孤独兵士援助制』が適用され、無料でアパートに必要なものが支給されるのだ。来月は洗濯機が運ばれてくるという。孤独兵士援助制により彼は毎月3千円分のスーパーの買い物券を受け取っていて、私をスーパーに連れて行って私のために使おうとする。来月から私は住民税を支払わなくて良いようになるらしい。義理の息子が休暇で毎月1、2晩泊まりに来る、たったそれだけのことなのに。
今まで21年間自分がこの国で払ってきた高い住民税、所得税、消費税の行方が、娘のボーイフレンドが兵役中であったり、義理の息子が戦闘部隊にいることで、税金の行方の詳細を具体的に知るだけでなく、兵士の息子を持つことで軍から物をもらったり、住民税免除になるとは皮肉な話である。武装反対、占領反対を訴えている私がである。
選挙の投票日、仕事がやすみだった私は、イスラエルの核兵器の秘密を世界に暴いたことで非国民とされるモルデハイ・バヌヌと旧市街に出かけた。ビア・ドロローザを歩いていると、土産物店の親父がバヌヌを呼び止め、選挙の話をし始めた。旧市街を含む東エルサレムの住人には選挙権がない。
『おい、バヌヌさん、投票にいきましたか?え?行かないの?もし俺に選挙権があれば、ナタニヤフに投票するよ。どうしてって?入植地を拡大して土地略奪、ベドウィンさえも追い出して、子供を逮捕して暴力の振るい放題。パレスチナ人をここから追放しようとして無茶やってる。だけど結局は無茶やりすぎて、このまま行けばイスラエルは崩壊する。彼に任せておくことがイスラエル滅亡へ一番の早道なんだ。』
娘のボーイフレンドにこの話をすると『なるほどね、一理あるよ。』と言って頷いた。
選挙後2週間内に政府を形成しなければならないことになっているイスラエル、軍費を更にアップする提案をしているビビ・ナタニヤフが再度首相に納まりそうである。選挙の結果は、トップが右派のナタニヤフ(リクード党)、2位は左派のヤエル・ラピッド(イエシ・アティードー未来があるという意味のヘブライ語―党)、3位はシェリー・ヤヒノビッチ(労働党)、4位がナフタリ・ベネット(ベイト・ユーディーユダヤの家―党)、5位が極右シャース党であった。左派と右派が半々である。
といってもイスラエルには本当の左派は極めて少ない。アラブ人の政党は最下位である。
戦っていなければ国を維持していけないこの国は今後も占領を続け、国際法違反してパレスチナ人を苦しめ続けることだろう。そしてもしかしたら、土産物屋の親父が言った通り、いずれ自ら崩壊するのかも知れない。
美恵子
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