ゴッホを語ることは、共同体を語ることだ。共同体を語ることは、愛と死について考察することに他ならない。
画家たちでフリーメーソン式の秘密結社をつくろうという考えにはあんまり賛成出来ない。規則や制度などを非常に軽蔑しているし、僕は要するに規約とは別のものを求めている。そういうものは物を秩序立てることも出来ず、終わることのない論争を捲き起こすだけだ。それは頽廃の兆候だ。ところで、まだ画家の組合は実現していない──幅の広い漠然とした草案程度で──出来るものは出来るのだからそれまで静かに待つとしよう
──べルナールへのゴッホの手紙
ゴッホは共同体を作るために絵かきを目指したのではないでしょうか。叔父が創立した画商に勤めた後、落ちこぼれの伝道師として炭鉱の町ポリナージュで坑夫たちの現実を知ります。「世界にはまだ実に多くの奴隷制がある。」と弟のテオに手紙を送り、坑夫と共に生きようとします。しかし、その異常なほどの献身的な行動は伝道師を逸脱するものとして仮資格を剥奪されました。そのようにして、見様見真似で炭鉱の町や坑夫をスケッチしていたゴッホは、画家になることを決意したのです。その後、共同体への第一歩として始めた、アルルの黄色い家でのゴーギャンとの共同生活に挫折したゴッホは、耳を切り精神病院での日々を送ることになります。死の3日前、テオに書いた最後の手紙に、画家の組合への決別を語り、鉄砲で自らの腹を撃ちぬきます。そして《明かしえぬ共同体》が立ち現われるのです。
2018年最初のFAUレクチャーは、新宿1丁目IRREGULAR RHYTHM ASYLUMで、ゴッホの愛と死をめぐって、ジャン・リュック・ナンシー『無為の共同体』、モーリス・ブランショ『明かしえぬ共同体』、ジョルジョ・アガンベン『到来する共同体』を横断しつつ、共同体の可能性を探ります。
日 時 2018年1月28日(日) 19:00~21:00
場 所 IRREGULAR RHYTHM ASYLUM(東京都新宿区新宿1-30-12-302 丸の内線新宿御苑駅徒歩5分)
資料代 500円+投げ銭(ワンドリンクオーダー)
講 師 上岡誠二(FAU/A3BC)
学 食 カオスフーズの名物カレー(カンパ制)
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