女掠屋リキさん伝
水田ふう・向井 孝 (黒 La Nigreco)
「掠ヲ常習トス」「無産者、生活困難ナリ」……
昭和初年代、掠まっ盛りの時代を舞台に活動したただひとりの女掠屋・安田理貴の生涯
2006.11.1刊
B6判304頁
頒価:1,800円+税
直販:1,800円+〒200円
リキさんは、戦前、関西中で名を馳せた女掠屋やった。1909年生まれ。被差別部落の子たちへの差別を目の当たりにして主義かぶれ少女となり、12歳で三重国児園収容。15歳、天皇誹謗ビラを懐に、ヒロヒト成婚の行列を横切って逮捕、宮城刑務所入獄。4年後、出獄してすぐアナキスト野口市郎と結婚。以降、奈良、和歌山、大阪の放埒無頼のアナ仲間と活動(その間、恋愛事件多数)。翌年、裕仁を出産。大杉栄追悼会開催を理由に夫・野口は1年という重刑に。乳呑児をかかえ路頭に迷ったリキさんは三越へ乗り込み、裕仁を掠種にして大金を掠る……そんな、リキさんの波瀾万丈の生涯をたどったのがこの本。
ところで、いま「掠屋」いうても、知る人はほとんどいないやろ。「掠」は、資本や権力者に搾取・収奪された富を奪い返すいう意味や。大手の銀行・鉄道・紡績・百貨店などの広告を勝手に載せて、広告料、購読料の名目で金をとりにいくんや。大正末から昭和初頭にかけては掠まっ盛り。リキさんが活動したのはまさにこの頃のことや。
この「掠」のことは、既存のアナ運動史にはほとんど出てけえへん。むしろ運動の恥部として無視されてきたんやった。しかし、1923年大杉ら虐殺、同年から24年にかけてのギロチン社事件、それから、35年無政府共産党事件、36年農村青年社事件でアナ運動が圧殺されるまでの十数年間——アナ仲間のおかれた状況を思ったとき、アナキズム「本来」からズレたりはみ出したりした動きを、その部分だけ切ってすますいうわけにはいかんやろ。
掠まっ盛りの大正末から昭和初頭は、アナの衰退・終焉期とかいわれたりしてる。しかしもっともアナらしい動き——無名者の運動としての網状のひろがり——がでてきたとき、ともいえるんや。たとえば、震災前後、深川富川町に集まってきてた20歳前後で、学歴もなく、いわばルンプロ・アナの若者たち。かれらが、あちこちで出会い、野蛮人社とかボルでは考えられんような名前の小結社をつくって、共同生活しながらいっせいに活動を開始した。ブタ箱に頻繁に出入りしながら、各地のアジトを往来し、運動の地図を新しく塗り替えだした……そんな時期でもあったんや。
しかし、官憲においつめられ、住む場所を追われ、だんだん食い詰めていくかれらは「掠」を始める……そうして、その掠もだんだんできんようになって、「掠屋」といわれたほとんどのひとたちは戦前戦中、人知れず窮死していったんやった。
向井さんが戦後すぐに出会った、小松亀代吉さん、林隆人さん、リキさんは、したたかに戦争をくぐって生き残ったわけやけど、その生涯は、窮死した仲間の運命とも同じものでもあったんや。その意味で、この本はリキさんだけの生涯やなく、窮死した、〈無名〉のアナ仲間の生涯をたどった本でもある。
昨年刊『アナキストたち——〈無名〉の人びと』の姉妹編として、どうぞいっしょにそろえてください。
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