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イレギュラー・リズム・アサイラム
160-0022 東京都新宿区新宿1-30-12-302
tel:03-3352-6916 | email: info@ira.tokyo
新しいホームページ: http://ira.tokyo
営業時間 13:00〜20:00(月・水定休)

IRREGULAR RHYTHM ASYLUM
1-30-12-302 Shinjuku, Shinjuku-ku Tokyo 160-0022
tel:03-3352-6916 | email: info@ira.tokyo
website: http://ira.tokyo
Opening Hours 13:00〜20:00 (Closed on Mondays and Wednesdays)
志賀直輝



 私は、八月下旬から十月下旬まで北スウェーデンのウメオ(Umeå)という大自然に囲まれた町にいた。ウメオはスウェーデンで4番目にアクティビストやアナキストが多い町だ。特に、アニマルライツ(動物愛護ではなく動物の権利・解放運動)やビーガン・ムーブメント(完全菜食主義)がスウェーデンでもっとも盛んだ。また戦闘的ビーガンやストレート・エッジ(タバコ/ドラッグを摂取しない。酒を飲まない。快楽目的のみのセックスをしない。80年代アメリカのハードコア・シーンより発信)が多いことでも知られている。


▲ウメオのアナキストたち

 私は、コレクティブハウスと呼ばれるアナキストやアクティビストたちのコミュニティーに居候していた。コレクティブハウス(借家に3人から8人ぐらいで住んでいる)は一地域に集中している。だから簡単に近所のコレクティブハウスへ行き来ができる。そのおかげでさまざまな活動が活発化しやすい。
また、ここに住むアナキストやアクティビストの大半が女たちだ。彼女たちは、ただの女ではない。彼女たちは、徹底的にセクシズム(男らしさ・女らしさに執着する考えまたは人々)と闘うフェミニストやクイアだ。彼女たちの80%はレズビアン、15%はバイセクシャル、5%はヘテロセクシャルだ。
 また女同士で結婚または同棲しているカップルもいる。中には子どものいる家庭もある。彼女たちは精子バンクを利用して子どもをつくった。注目すべき点は精子バンク云々よりも、地域社会が同性同士の結婚・育児を認め支援するという社会基盤だ。
 私の知る限り、ウメオのアクティビストで子どもがいる女同士のカップルは3組。また新たに子どもを作るカップルもいる。私が居候していた家の一階には、女同士のカップルと彼女たちの子どもが3人住んでいた。彼女たちは同じ男性の精子バンクを使用し一人の女性は2人の子どもを、もう一人の女性は1人の子どもを出産した。子どもたちはとても元気でのびのびとしている。連日、子どもたちは私と友人の部屋に遊びにきていた。日本のアニメを一緒に見たり、ビーガン寿司を一緒に食べたりした。近所の子どももよく遊びに来ていた。子どもたちは元気に毎日保育所へ通っている。
 また、その他にもコレクティブハウス内で育児をする人たちもいる。子どもたちは親だけではなく様々な人間の中で育つ。コレクティブハウスの仲間たちが一緒に育児に参加することで親たちは活動や仕事を継続できる。ここにもコレクティブハウスの大きな利点がある。



▲コレクティブハウスで育児

 また、ウメオのアナキストたちの98%がビーガン(牛乳も卵もとらない完全菜食)、2%がベジタリアンだ。肉食はまったくいない。私がウメオで会ったり、見た人々、150人近くの人々がビーガンだった。ちなみに私自身は、日本では肉食。旅に出てからの二年半はなるべく肉は買わないが、人から与えられた肉やまだ食べられるのに捨てられた物はなんでも食べている。ここの環境では超マイノリティーになる。
 ウメオの地元行政は地元の人々のためにカフェやライブハウスなどの施設を無料提供している。アクティブストたちは、この場所を利用して毎週日曜日にビーガンレストランを開いている。店員はボランティアで行われ、格安のビーガン料理を出している。このビーガンレストランの収益が動物解放運動に当てらている。私も毎週日曜日はこのレストランで働いた。給料代わりに余った料理をいつも持ち帰っていた。


▲ビーガンカフェとビーガンたち

 ウメオのアナキストたちはいつも寝る場所や食べ物を惜しみなく分け与えてくれた。彼女たちは非常に活動的ですごくラディカルだ。しかし、たまに納得できない人々もいた。たとえば、私の友人の一人はベジタリアンだ。彼女は、たまに自分のことを卑下していた。なぜならビーガンではないからだ。これには驚いた。私も数人に「あなたはビーガンか?」と聞かれた。最初の頃は「いや、出された物は、なんでも食べるよ」と答えていた。すると「アナキストならビーガンになるべきだ」と説教されたり、絶句された。また、私が人の食べ残した肉をもったいないと拾って食べていたら、気持ちが悪いと拒絶されたこともある。ビーガンの話しになるとハードコア・ビーガン(彼女たちはそう自称する、私は原理主義ビーガンと呼ぶ)の一部は二元論的に物事を話す時もあった。肉食はだめ、ビーガンが正しいといった論調だった。何度か肉食やアルコールのことで言い合いもした。これはストレット・エッジとの間にも同じような場面が多々あった。
 こういった雰囲気に軽度な全体主義な匂いを感じた時もあった。どんなに素晴らしい思想や考えでも、軽度な押し付けが続けば、かつての共産主義やファシズムと同じような結果を生み出すんじゃないかなんて思ってしまう。
 私は、この違和感をその都度仲の良い友人に話した。もちろん、友人はよく理解してくれた。これは、ウメオだけの問題じゃなくて、熱烈になにかを実践している現場にはありがちな気がする。人間がもっている悪い癖なような気もする。私が願うところのアナキズムは、キャプテン・ハーロックのように降りたい奴はいつでも船から降りれて、サパティスタのように戻りたいときはいつでもまた一緒に参加できる、そんなものを願う。
 もちろんウメオの大半がこういった押し付けがましいビーガンではない。押し付けがましい奴はほんの数人しかいない。また、正直なところ私自身、ビーガンについてほとんど知らなかった。あんまり肉食についても考えてこなかった。こういった点が今となっては恥ずかしい。「全体主義者め!」なんてビーガンの友人を罵ったが、これは自分の無知を誤魔化していたと思う。しかし、知ることに遅すぎることもない。友人から嫌ってほどビーガンやアニマルライツの話しを聞いた。なぜ、ビーガンなのか?彼女たちはこう答えてくれた。

 まず第一は、動物の生きる権利を守ること。食用とされる動物の多くは、大量消費に合わせて大量生産されるため、狭い檻にいれられる。ひしめき合いながら餌を与えられ、糞にまみれ、太り、殺され、スーパーマーケットに陳列され、食卓へ上る。人々が肉を大量に食べれば食べるほど、動物は大量に殺される。買えば買うほどこの悪循環は加速する。
 私たちは毎日、肉や魚を食べなくても生きてゆける。毛皮や皮製品がなくても生活になんら問題ない(原住民や地理、環境的に食事や衣服などに選択肢がない人々ではなく、食事や生活にある程度、選択肢がある人々を指している)。必要最低限に肉食や魚食を抑えることで、その分殺生が減る。革製品を買わないことで、その分殺生が減る。動物実験していない商品を選ぶことができる。新商品を買わなければ、新たな商品開発のために動物実験が行われずにすむ。


▲実験にされて目を失ううさぎ

▲毛皮にされた動物

 長ったらしく書くのもなんなのでこの辺は、家畜の実態についての文章や動物の殺される映像や写真をみてください。以下参照。
  
中国毛皮産業の実態 (忙しくてもこれだけは是非みてください!)
http://www.no-fur.org/furfree/video/15_2.html
http://www.fur-free.com/

動物実験映像
http://www.arcj.info/download/movie1/index.html 毛皮産業の真実
http://www.no-fur.org/video/furstela.html
 
WHY VEGAN?日本語
http://www.veganoutreach.org/whyvegan/wvjapanese.pdf 

アニマルライツ
http://www.arcj.info/

 第二は、肉食が飢餓、貧困、自然破壊を広げる原因になっていること。現在の世界人口は65億人(2006年)。うち、飢餓状態の人口は8億5千万人。つまりは7.5人に1人が飢餓状態におかれている。では、どうして肉食が飢餓を広げているのか?それは、家畜が大量の穀物を必要とするからだ。例えば、牛肉1 キロ作るのに、10から30kgの穀物が消費される。牛肉で養える人数を1人とすると、穀物で養える人数は10人になる。つまり、肉食が増えれば、その分だけ穀物を食べれなくなる人が増える。
 また、この穀物をつくっているのが、皮肉にも飯がろくに食えない地域の人々だ。彼らの作った穀物は、自分の口には入らず遠い日本やヨーロッパの動物の餌になる。そして、この穀物を食べた動物を私たちは食べている。(飢餓と肉食参照)

 さらに、家畜は森林も気持ちよく破壊している。過去40年間で、南米の熱帯雨林の40%(1750万ヘクタール)が輸出用の牛肉を生産するために破壊された。破壊された土地に家畜が放たれ、過放牧により植物は食いつくされ、次第に侵食され土地が荒れる。
 その他にも大量な家畜が原因でメタンガスや二酸化炭素が増えている。そして大量な水も必要とする。ちなみに牛丼一杯をつくるために使われた水は1890リットルになるといわれる。
 また、これは家畜だけではない。日本人は世界で一番エビを大量に食べている。このエビを作るために東南アジアの国々はマングローブの林を切り開き養殖場をつくる。金がないから抗生物質を使用する。抗生物質により池は汚染され、新たな林を切り開き養殖場をつくる。過去20年間で25%のマングローブの林が失われた。うち1/3はエビの養殖地によるといわれている。

肉食と飢餓
http://www.nikusyoku.com/kiga/index.html

家畜と環境破壊
http://www.nikusyoku.com/nature/index.html

Anti-Mc Video Game (2006) ゲームで実感できる。これはおもしろい!
http://www.mcvideogame.com/

 第三は菜食が身体にいいこと。ビーガンやベジタリアンの食生活は肥満、心臓病、高血圧、糖尿病、腸ガン、肺ガンや腎臓の病気にかかるリスクを低くする。また、野菜や果物を多く取ることは、心臓血管の病気、いくつかの一般的なガン、そして黄斑変性症や白内障等、他の慢性疾患のリスクを低くする。(WHY  VEGAN?より)

 以前、ビーガンの友人に「なんでアナキストなの?」と聞かれたことがある。私は「資本主義や金持ちや貧乏人がいるピラミッド型のヒエラルキーを壊したいからー!」と馬鹿の一つ覚えで答えた。そして友人はつづけて「そのヒエラルキーの一番下にいるのが動物なんじゃない?アナキストなら、ビーガンになるべきなんじゃない?」と返された。これには、ぐうの音もでなかった。

 まったく友人の言う通りかもしれない。いつもの悪い癖で政治がどうの、システムがどうのと愚痴ってばかりで。まずは、自分の生活を変えてゆくことが先なのかもしれない。


▲肉や魚、卵や牛乳を使わないおいしいご飯たち

 最後に一部の戦闘的ビーガンの活動を紹介したい。ウメオ近郊で動物解放戦線(Animal Liberation Front 以下ALF)を名乗る人々もいる。もちろん「非合法」活動なため、どこの誰だかさっぱりわからない。動物解放戦線は1970年代より始まった動物解放のために直接行動するアナキストの運動体だ。動物を解放するためなら非合法も問わない。また、ALFを自称するには以下の条件がある。

1.動物の権利を乱用する場所、実験室、工場式飼育場、毛皮飼育場などから動物を解放し安全な環境へ置く。
2.動物へ苦痛を与えたり開発に利用し収益を得る人々へ経済損害を与える。
3.非暴力直接行動や解放運動を実行することで、隠された動物への恐怖や残虐行為を明らかにする。
4.人間やどんな動物にも危害を及ぼさないよう細心の注意を払う。
5.ベジタリアンか絶対菜食主義者であり、ALFガイドラインに従って行動する人々は、どんなグループでもALFの一部として自任できる。


▲動物解放戦線

動物解放戦線の活動内容は以下でみれる。
http://www.animalliberationpressoffice.org/history.htm

 ウメオ近郊でビーガンが広まりだしたのは1994年あたり。多くの人々がビーガンやアニマルライツの学習をはじめ、話し合いを繰り返した。その結果、ウメオのビーガンが急増した。アニマルライツのデモもはじめた。その一方、同年ALFを名乗る戦闘的なグループが非合法行動を開始した。食肉処理場へゆき肉輸送車を3台全焼させ、莫大な損害を与えた。その後も食肉処理場と牛乳会社の輸送車なども全焼させてた。数年後、開店したばかりの食肉処理場を全焼させた。その結果、現在はウメオに食肉処理場がひとつもない。
 その他にも多くの非合法行動がつづいた。狩猟監視タワーを全焼、ハンバーガーショップや動物関連の店の窓ガラス破壊とスプレーで反対メッセージ、卵会社全焼、サーカスへのデモまたその車の破壊、肉を扱うスーパーマーケットの破壊、ETC。また、動物飼育場からミンク、きつね、ねずみ、ねこ、うざぎ、魚などを多数救助している。.
 1998年、ALFはウメオの付近のミンク飼育場に侵入し、檻を破り、20000匹のミンクと数匹のきつねを解放させた。また、ALF以外の活動家も4回ミンクの解放行動をおこなっている。最近では2006年に2500匹のミンクを解放させている。スウェーデンのALFは、世界中でもっともミンクを救出している。その数は100000匹にも上る。

「想像してみてよ!たくさんのミンクが自分の生活を楽しみ、走り回ったり、ともだち作ったり、泳いだり、新しいところへいったり、幸せや悲しみや暖かさや寒さを感じ、主人もなく自分の人生を楽しむことを!」とアナキストのひとりは語る。そして続けてこう言う。「でも、解放されないミンクたちは、小さな折の中で自分の糞に塗れて、7、8ヵ月後にはガスで殺される。そして彼らの皮膚は毛皮のために引き裂かれる!」。
 アナキストの黒い覆面の中はやさしさと怒りが交じり合っている。
 
 ここで注意すべき点は、非合法活動はごく一部のアナキストが行っていること、そして大半の人々は合法活動を継続させている。彼女・彼らは動物解放だけに留まらず様々な行動を街頭で呼びかけ、デモをやったり、雑誌をつくったり、ビーガンカフェを開いたり、ハードコアギグを開いている。中には「マンコ・クルー(fittcrew)」というクイアでビーガンでフェミニストたちのブレイクダンスのクルーもある。


▲ゲイパレードに参加するマンコクルーたち

 その他にもたくさん活動がある。ウメオではセクシズムや商業ポルノへの反対運動も盛んだ。彼女たちは、ポルノを販売する店の窓ガラスを破壊し、スプレーで反対メッセージを残したりしている。その結果、ウメオの商店にはポルノ雑誌がほとんどない。
 ウメオのアナキストやアクティビストの中には、町から少し離れたところに小さな村づくりをする人々もいる。彼らは7人から13人ぐらいで共同生活し、農業を営む。そしてもちろん町の活動にも参加する。
 その他にも、ドメスティック・バイオレンスに悩む女性支援をするグループ、ウメオに住む移民・難民たちの暮らしをサポートするグループなどが盛んだ。


▲農業トラクターを運転する女

▲農業を営む女たち

最後にウメオの戦闘的アナキストより日本の親愛ならアナキストたちへメッセージ。

Say hi to all japanachists! Thanks for the inspiration!

Get active! Keep fighting! Stay active! Stay happy! Stay healthy! Stay angry, never bitter! Never give up! Never grow up! Break your own and others laws and follow your heart! Start your own ALF group! Free the animals! Smash capitalism! Smash patriarcy and hetrosexism! Be in nature a lot! Be nice to your love ones!


▲アクティビストハウスを要求するアナキストたち

まとめ。肉食でエロ本好きな私はウメオで根底から自分を考えさせられた。さぁ、どうしよう。何食って、何でぬこうか。ビーガンになって、想像力でぬくのも悪くないかもしれない。想像力は権力を越えてゆく。ぼくの精子は世界を越えて行く。そうだ、旅へゆこう。来週、グアテマラへ飛ぶ。
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